ハローファミリー専門家に聞く
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コクヨの家族見守りサービス「ハローファミリー」。このコラムでは、ハロファミ開発チームが、仕事に、学びに、遊びに奮闘中の親子を応援するため、子育てにIoTデバイスを取り入れるメリットや、効果的な使い方を専門家にうかがいます。

前回に続き、三鷹市立第三小学校との合同プロジェクトについてお伝えします。 今回は、図工を担当している山戸ちひろ先生にお話しをうかがいました。 2024年6月より、ハロファミチームは5年生の生徒さんとともに「はろここトークの新しいケースをデザインする」という課題に取り組んできました。ハロファミチームのデザイナーが講師を務めたデザインの授業では「デザインは、絵を描いたり工作したりするのと何が違うのか」を伝えました。真剣なまなざしで耳を傾けてくれた子どもたちとともに「使ってくれる人に届く商品にするには?」を考え抜いた数か月は、ハロファミチームにとって忘れられない時間になりました。 取り組みの集大成として、昨年12月下旬にデザインの最優秀賞選考会を実施。本インタビューでは、最優秀賞に選ばれた泉晶野さんの感想も聞かせていただきました。

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子ども時代の山戸さんは、図工の授業で画用紙のど真ん中に大きなうさぎを描いた。周りの子の絵を見て「うさぎを大きく描きすぎた!失敗した!」と落ち込んだ。そのとき、図工の先生から「山戸さんにとってうさぎの存在がどれほど大きかったのか、この絵からよく伝わってくるよ」とほめられた。大人になり、将来の進路を模索する中で、この日のことを思い出した。図工の先生になりたいと思った。美大卒業後、デザイン事務所で社会人経験を積んだ後、小学校の教諭となる。どの子の感性にも光っているところを見つけて励ませる、そんな理想の先生になれるように今も奮闘している。

ハローファミリー開発ストーリー

ハロファミ:今回、山下先生につないでいただいたご縁で、5年生の生徒さんたちと新製品のデザインに取り組むという貴重な機会をいただいたわけですが、図工の時間にデザインを扱うということで、山戸先生が工夫された点や、生徒さんたちにとくに伝えたかったことがあれば教えてください。

山戸:小学校の図工の授業って「感じたことから絵に表す」とか「想像を広げて表す」といった、どちらかというとアート的な活動が多いんです。でも、どんな表現方法がその子にはまるのか、やっぱり個人差があると思っていて。だからこそ、学校では多様な表現を体験させてあげたいなと。学校の図工でも「情報を整理する」とか「他者の考えを汲み取って形にする」といったデザインの領域に、もっと触れてもいいんじゃないかというのは、以前から考えていました。今回、山下先生からご提案をいただいて、実際にデザインを仕事にしている大人から学べるというのはすごいチャンスをもらえたと思って、取り組みへの参加を決めました。

ハロファミ:私たちが頭を悩ませたのは「デザインにはいろいろな制約がある」ということを生徒さんたちにどう伝えるかでした。工業デザインというのは、制約のなかで新しいものを作っていく仕事でもあるので。「自由に描いていいよ」って言ってしまったほうが簡単だし、そのほうが生徒さんたちも楽しく取り組めるのかもしれない。でも、みんなと直接話せる貴重な機会だからこそ、デザインを仕事にしてきた自分たちが現実を伝えなくてはと思って。

山戸:現実のものづくりの難しさも、子どもたちは前向きにとらえていたと思います。授業では本当の仕事現場のように「家族」というテーマやコンセプトについてクラスで話し合いをすることから始めました。制作のプロセスに他者の視点、テーマやコンセプト、工業デザインならではの形や大きさという「制約」が入ることが、作品づくりにどう影響するのかなと私も少し心配でしたが、みんなが同じような作品になってしまったり、難しくて描けないといった問題はなかったんですよね。むしろ、クラスで話し合うことで、自分が作りたいものがよりはっきりした子が多かったと思います。「あたたかいってどんな形や色だろう」「守ってくれるってどんな表現になるかな」という話し合いが、ものすごく盛り上がっていたことが印象的でした。ふだんの授業では「感じたことから絵に表す」とか「想像を広げて表す」といった内容が多いですが、今回は「GPSのケースをデザインする」という極めて具体的かつ現実的な内容で、形に落とし込むプロセスも今までにない方法に挑戦したので、新鮮な気持ちで取り組んでいる子が多かったように思います。表現や創作と言っても方法は一つじゃない。いろいろなプロセスや方法があって、それぞれに力を発揮できるやり方を見つければいいということを子どもたちに伝えられたのではないかと思います。

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――受賞おめでとうございます。どんな気持ちですか?

晶野さん:結果発表の日は、学校を休んでいたから「最優秀賞に選ばれたよ」って友だちから聞いて、すごくうれしかったです。

――ハロファミの授業は、いつもの図工とどんなふうに違いましたか?

晶野さん:大人がたくさんいた。

――(笑)。

晶野さん:みんなで話し合ってから絵を描くというのが初めてだったから、おもしろかったです。みんなの意見を聞いて、どんな人が使うのか考えたり、男の子でも女の子でも使えるデザインにしたほうがいいとか、そういうことを友達と話し合って決めることができました。

――「家族」をテーマにしたときに、晶野さんはどうして「顔」をたくさん描こうと思ったのですか?

晶野さん:顔は、いつも家にあるから。話しているときも、いつも家族の顔を見ていると気づきました。笑顔だけじゃなくて、いろいろな表情、いろんな色があったらおもしろいと思いました。

――家族のつながりを「顔」で表現してくれたことがユニークだと思いました。リズムよく並ぶカラフルなイラストも、製品のデザインとしてかっこいいものに仕上がると感じて、最優秀賞に選びました。自分が絵に描いたものが商品になることについて、どう思いますか?

晶野さん:誰かに本当に使ってもらえるのがうれしい。どんな人が使うのかなって考えるとワクワクしてくる。自分がつけた色とは違う色になってたけど、自分が描いた絵よりかっこよくしてくれて、うれしかった。

――デザインの仕事に興味がわきましたか?

晶野さん:うん。そういう仕事をしてもいいかもと思った。

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ハロファミ:どの生徒さんの作品にも、思いや発見があって、最優秀作品を選ぶのが本当に難しくて……(苦笑)。結局、最優秀賞のほかに4つの賞を設け、総勢14名を入選とさせていただきました。正解は一つじゃないけど最適解を探してもがいた大人の姿を見せられたと思います(苦笑)。

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山戸:自分の作品について、どうしてこの色にしたのか、どうしてこういうイラストにしたのかという理由や考えをどの子もちゃんと説明できていたことは、よい驚きでした。それは事前に、プロのデザイナーさんがどうやってこの製品を作ってきたのかということをじっくり授業で話していただいたからだと思います。「ものづくりってそこまで考えてやるんだ」とか「デザインでそういうところを考えているんだ」というプロの視点を子どもたちが学んだんですよね。プロの思考を追体験することができたというのが、この授業の成果の一つだと思います。

ハロファミ:どの作品を見ても、大人の自分からはこの発想は生まれてこないなというのを痛感しました。「どうしてバナナなんだろう?」と聞いたら「バナナが好きだから!」という答えが返ってきたりする。まっすぐで強いと思いました。私たちがどんなに知恵を絞っても、みんなのような作品は作れないな。子どもの感性ってやっぱり特別ですね。こうした授業を通して、私たちが子どもたちの声を聞かせてもらえることがありがたかったし、今後も、子どもたちの持つ新鮮な感性を、製品づくりに活かしていきたいと思いました。

山戸:自分の好きなものとはろここの「テーマ」や「コンセプト」を結び付けて表現できている子が多かったですよね。デザインという制約があっても、子どもたちの自由な発想を邪魔してしまったり、自由な表現ができないわけではないというのを私も再認識できたように思います。

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ハロファミ:優秀作品を製品化したいということは、みんなにも最初に伝えていました。大人の仕事のプロセスを実際に体験することには、どういうメリットがあると思われますか?

山戸:まず、子どもたちが大人の会議のように話し合う姿を見ることができたのは、とてもいい経験でした。ふだんの図工の授業では子どもたちがホワイトボードにマインドマップを書きながら話し合いを深めるという場面はあまりないので、たくさんの発見や驚きがありましたね。最初にハローファミリーや、はろここにとって欠かせない、重要な要素を話し合って抽出していったのですが、コクヨさんの商品開発の意図や子どもたちを見守る大人の気持ちというものを、5年生なりに企業や大人の立場に立ってよく考えていました。 5年生でも、自分が生きている社会に無関心な子はいなくて、外の世界にすごく興味があるということを感じました。社会とどうつながったらいいか、みんな本当によく考えていて。社会とつながりたいという気持ちを図工の授業でも大切にできたらいいなとあらためて思いました。子どもたちにとっても、自分の表現を通して社会とのつながりを持つという体験ができたことがとても良かったと思います。

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ハロファミ:今回の授業で「家族」というテーマを子どもたちと一緒に探究していく中で、家族のあり方や親子のつながりについて、何か変化を感じましたか?

山戸:家族のあたたかさとか、守ってもらえているという安心感を子どもたちが求めているというのは、いつの時代もずっと変わらないと思います。ですが、社会全体がどんどん忙しくなっていって、保護者の方も本当にお忙しくされているのは感じています。それでも、ハローファミリーのようなツールを使って、今の保護者は子どもとのつながりを持ち続けているんだな、本当にすごいなと感心してしまいました。

ハロファミ:本当にそうですね。子どもたちから出てくる「家族」のイメージが、あたたかいものや安心できるものという言葉でいっぱいで。たしかに今の親御さんはみんな忙しいけれど、家族のつながりを大切にしようと奮闘されているんだということは私たちもすごく感じました。

山戸:子どもたち自身についても、自分が子どもだったころと比べると、受験や習い事ですごく忙しそうだなと感じることがあります。以前、保護者の方から「うちの子は図工が心の支えみたいなんです」と言われたことがありました。嬉しい反面、子どもの心を守る責任の重さも感じました。 今回の授業でハロファミに込められた思いを詳しくうかがうことができて、子どもが本当に好きなものや楽しいと思えることを大切にされてきた製品なんだなと感じました。その商品のコンセプトが、色や形、デザインからも感じられるとてもあたたかい製品だと思います。

ハロファミ:ありがとうございます。山戸先生から見たハロファミを使うメリットをこのボードに書いていただけますか?

山戸:わかりました。

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「ハロファミは、子どもの社会との絆を育む」

ハロファミ:山戸先生、ありがとうございました。


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